JDF
INFORMING. INSPIRING. EMPOWERING.
JDF

Social

TUVSHINJARGAL DAGIIMAA

モンゴル金融経済大学経済学部シニア教師


October 11th, 2017


Д.Жаргалсайхан
@jargaldefacto


5217   0


34 min


J(ジャルガルサイハン):どうして国の政治経済の発展において制度の役割が重要なのですか?

トゥブシンジャルガル:モンゴル人は制度というと慣例という意味で見がちです。他には暗黙のルール、特定のノルマ。経済において最も重要なことは費用や無駄が少なく、不明確な状況がなく、投資した財産が保護されてなければなりません。過去30年これを制度が保証してきました。 

J:この理論について話してもらえませんか。どうして正しいと思われますか?

トゥブシンジャルガル:1991年にノーベル経済学賞を受賞したロナルド・H・コースは言いました。どうして企業が存在するのか。またどうして市場において企業が自由に活動できるのか。それを説明するには取引コストという概念を用います。経済学では取引コストを0とみています。しかし実際の活動には色々な費用がかかります。このメカニズムを研究する学問には二つのレベルがあり、一つはマクロレベルにおいて各国の政治制度、財産保護などを研究するものです。他方、私が研究しているのはよりミクロレベルのものです。2016年にモンゴル国立大学付属の経済研究所が調査を実施しました。中小企業が行政との対応にいくら出費しているか標本調査をおこない平均額を算出しました。例えば、企業を登記するために平均882,000トゥグルグの取引コストが必要となります。これは行政機関が様々な決定を先延ばしたことにより失われた機会の損失であり、企業が行政機関に支払った間接的な費用です。さらに特別許可を取る際に平均110万トゥグルグの間接的な費用を支払っているという調査結果が出ています。これらすべてが行政との対応において生じている取引コストです。この他に企業間で取引を行う際にも取引コストが発生します。特に契約が守られない時の費用です。

化粧品会社のラモール社の社長が当大学の講演で、オブス県から岩塩を仕入れていることについて話しました。8月にまとまった受注をし、岩塩の取引先から発注した通りに岩塩を仕入れるため電話でやり取りを行いました。そして電話を切ってから14日間連絡が取れなくなりました。心配になり探してみると、その取引先は結婚式などで田舎に行っていたと言ったそうです。

問題は取引先から岩塩の仕入れをどのように安定させるかです。一般の経済学者はこれをコストに入れないが、制度経済学者はこれをコストとみて改善が必要との側面に立ってみます。どのように仕入れを安定させ資産を守るかの制度を立案します。

J:こういったことをどのように無くすことができるのですか?

トゥブシンジャルガル:基本的には公的ルール、つまり裁判ですが、政府に期待しないことです。そうすると、相手の人がどうしたら約束を果たすのか、それを自分で考えルール化していく必要があります。政府に頼らず当該企業が率先して自らルールを策定して契約をつくります。東ヨーロッパ諸国の体制が崩壊した1990年代初頭、裁判所や政府が十分機能しなくなると契約がりこうされ守られなくなりました。そのため人々が相互に担保をとるメカニズムが出てきました。例えば、乳製品を製造する工場は原料を供給している農家に対して支払いを止めたり、価格を安く設定していた時期があります。このような状況を脱するために、牛乳の供給と同時に銀行保証、あるいは前払金を支払うなどを取り決めました。このように政府の弱い部分を民間で調整することによって、これが制度となり発展したケースが多くあります。

J:銀行保証のために資産を担保とする必要がでてきます。東ヨーロッパのポスト共産主義国の発展は、モンゴル同様金利が17〜20%で上げ止まったことではありません。モンゴルでの金利が高いことをミクロ経済の視点からどのように見ていますか?いつ金利が下がると思いますか?

トゥブシンジャルガル:マクロ経済学者は、要因となるインフレと預金金利が高いことを関連づけて説明します。制度としての観点からみれば銀行の高コスト体質、市場が小さく競争力が弱い、また借り入れに関する民事裁判で解決するまでの期間が3〜6年と時間がかかることが上げられます。これが銀行にとって大きなリスクとなり、金利が高くなります。

J:銀行の競争力が弱いと言われました。競争には借入メリット、アクセス、製品、プロセスがあります。モンゴルではそれらの価格の競争が禁止されているため、金利で競争しています。モンゴルの銀行保有資産の80%を大手4行がもっているのに対し、残りの20%に15行がひしめき合っています。フェアに競争するためには何が必要ですか?

トゥブシンジャルガル:金融市場は大手4行による寡占状態です。市場を支配している4行は、表向き競争していますが、互いに牽制しあっています。過去数年間中央銀行がこの体制を崩そうとしてきましたができないため、国際通貨基金を入れることによって既存の慣習を崩すのに役立つかもしれないと思っています。私は個人的に銀行の経済について深く研究したことがないので詳細な情報、数字などは言えません。

J:今起きている現状と関連づけてみれば、とても良い結論だと思います。政治家が銀行に依存して、銀行に改善を要求できない。例えば、貿易開発銀行(TDB)が5人の名義に対し3人分の契約書で5億ドルを融資したのは、制度がどの程度のものかを示しています。近年、国際通貨基金が銀行に監査を始めました。PwCやKPMGなどの独立した監査法人の結果をモンゴル政府が客観的に受け入れ的確な判断をすることができれば、銀行間の競争が増えるとみています。小規模な銀行が存在する理由としてはNGOの増加です。以前は小規模な銀行は表と裏の金利があり、紙上には5〜10%としていても裏では高い金利を書いていたと2000年頃にたくさん表面化しました。この銀行規模によるサービスの差異を無くすことができると思いますか?

トゥブシンジャルガル:銀行が保有資産を増やす時にどんな過程があったか、その理由を探る必要があります。あなたの番組に出ていたジェイムズ・A・ロビンソンの「国家はなぜ衰退するのか」に挙げられた推測によれば、悪い経済制度つまり競争を制限した状況を、アメリカのビル・ゲイツ、メキシコのカルロス・スリムを例に解釈していました。カルロス・スリムは資産を守るために政治的な保護を受けていました。モンゴルでは政党が収入と支出を公表していません。これは関係する企業の収支も秘密ということです。そうするとこの銀行の問題はコインの片面で、裏をかえせば政治の問題でもあります。

Jアメリカ政府がビル・ゲイツに彼の会社の独占を制限したように、銀行の独占を止める必要があります。国の、つまり私たちのお金が投入された銀行は情報を公開すべきです。例えば、国から多くの資金が入っている貿易開発銀行(TDB)は国民に報告書を出すべきです。裁判費用が高いため、銀行の貸出リスクが大きいと話しました。費用及び預金金利もこれに含まれます。破綻した銀行の処理も終わっていません。裁判判決執行庁の手が回らず、破綻したセービング銀行(現ステート銀行)の中の個人資産が売却されるということが起こっています。これをどうやって止めますか?

トゥブシンジャルガル:裁判と関連している問題は失敗から学んで改善されていくでしょう。しかしこのような状況においては、法律や規定の改正には時間がかかります。企業や個人は、裁判に拘らず自身で銀行との契約を結び、それを履行させていくルールを考えていくことが大切です。

J1人で交渉するより協力して20、30人で交渉する方が有利です。監視機能も働きます。もし、一つの件で継続して業績が悪ければ、それに関して適切な措置を取り、質を向上させていくことも可能です。モンゴルの酪農家は不動産を持っていません。つまり代々受け継がれてきた越冬地を個人が売却する権利を持ちません。バグ(モンゴルの最小行政単位)内で単に越冬地を移す権利があるだけです。その土地を酪農家の共同資産として持てば、酪農家たちは資産を持ち繁栄していきます。これを実現するには資金が必要です。モンゴルでは一年単位の予算が組まれています。ある程度の自由裁量で期の半ばでも予算をつけたりする、そのためには中央銀行の独立性が重要になってきます。

中央銀行総裁は国会により任命されています。理由はなるべく政治から離すためです。しかし現実は政治家と一緒に行動しているので、国を赤字にしています。中央銀行の独立はどうして重要なのですか?

トゥブシンジャルガル:マクロ経済学に1970年代以降、政治的マクロ経済という流れが入ってきました。これはマクロ経済を良く見ようとするならば政治を良く理解しようという視点です。安定した経済を不安定にするのは政治家です。例えば選挙前になると、票集めのためにバブルを起こすという動きです。これによって景気変動が起き、長期的な経済期待が生じます。これを避けるために中央銀行を短期的な政治干渉から離す必要があります。私は2010年に中央銀行の独立性を調査しました。モンゴルでは独立性が低いのです。中央銀行の総裁の任期は6年ですが、解任に関しては誰がどのように解任するかが不明確です。結論としては、中央銀行総裁の任命には政治家が深く関係しているので、政府への資金の貸出が法的な制限もなく行われます。法律への意識が低いモンゴルのような国の政治依存度をみる時は、その国の中央銀行の総裁の任務状況を見れば良いという調査もあります。

日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC   http//translate.mig.asia

2017年10月11日

インタビュー全部をhttp://jargaldefacto.com/article/d-tuwshinjargal-tuvshinjargal-dagiimaaにてご覧いただけます。



Like the article?

Comments (0)


Upvote
0 people (0%)

Түдгэлзсэн
0 people (0%)

Дэмжээгүй
0 people (0%)

Related articles