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デファクトレビュー (2018.04.22)
DEFACTO REVIEW (2018.04.22)
32 min
リオ・ティント社とモンゴル政府会談
先週火曜日にリオ・ティント社の代表者は首都ウランバートルでモンゴルの閣僚たちと非公式の会議をした。この会議で何について協議したか政府から発表はない。リオ・ティント社がオユトルゴイ鉱山プロジェクトから撤退するという文書をモンゴル政府に提出したというニュースが報道されていたが、D.スミヤバザル鉱業・重工業大臣はそれを否定した。
リオ・ティント社の銅・ダイアモンド部門のCEOアルノー・ソイラット(Arnaud Soirat)氏はモンゴルを訪問し、オユトルゴイ鉱山の坑内掘り起工式に参加した。その帰国前にG.ザンダンシャタル内閣官房長官と会談した。1月23日にリオ・ティントグループの取締役がモンゴルに来て首相と会談し、オユトルゴイ鉱山プロジェクトが両者にとって利益のあるものにするため共同作業チームの設立で合意した。この共同作業チームはある程度活動している。先日も鉱山会社オユトルゴイ社の社員が日本を訪問して発電所等を見学した。だからこの共同作業チームの活動成果について話し合われたと思われる。また、1月にリオ・ティント社はモンゴルでオユトルゴイ鉱山の他に活動を広げるためウランバートルに事務所を開設した。その間にオユトルゴイ鉱山をめぐって関係者が逮捕された。逮捕されたのはモンゴル元首相2人と元財務大臣S.バヤルツォグト氏、エルデネス・モンゴル社の前社長B.ビャンバサイハン氏の4人である。逮捕理由はオユトルゴイの契約書に関して職権濫用、違法に決定を下した、関連企業に優先権を与えたかもしれないということである。4人が逮捕されて1,2週間経つ。勾留期間は1ヵ月なので、その後に彼らからコメントがあると期待している。
しかし、この件に重なって1億5000万ドルの罰金をオユトルゴイ社に科している。オユトルゴイ社は2009年に設立された。税務庁は同社の2010年、2012年の業務報告書に対して既に1億3000万ドルの罰金を科した。そのうちの3000万ドルを支払ったことは当然だが、残りの1億ドルの支払い方法でリオ・ティント社とモンゴル政府の合意が得られなかった。その後2015年に残りの1億ドルについてリオ・ティント社とモンゴル政府がドバイで契約書に署名した。ドバイでの契約書の署名の後に3年間止まっていたオユトルゴイ鉱山の坑内掘りプロジェクトが動き始めた。しかし、この1億5000万ドルは2013〜2015年の業務監査について科している罰金である。これは香港の仲裁裁判所に申し立てされることになるだろう。理由は罰金の支払い方法を明確にできず、なおかつ契約書に署名した人物を逮捕しているからだ。オユトルゴイ社は設立されてから15億ドルの税金をモンゴルに納税している。今年の第1四半期だけで5000万ドルの税金を納税している。今年は国に2億ドルの税金が納税されるとのこと。この数字は去年より2000万ドル多い。2017年にこの巨大プロジェクトが実施されたことによって1日当たり50万ドルがモンゴル政府に入っていたということは注目に値する。
オユトルゴイ鉱山プロジェクトを止めることは不可能である。既に坑内掘りだけに100億ドルも資金を投資している。このプロジェクトをオユトルゴイ社以外が続けて行くことは不可能である。問題は、目先のことにとらわれず長い目でみる必要がある。今後必要に応じて契約書を改善していくことが可能だ。オユトルゴイ鉱山プロジェクトの業務を停止することなく進めていき、必要な資金を投資していくことは両者にとって利益があると思う。なぜならばこのプロジェクトが14000人の直接雇用と間接的に関わる約50000人の生活に繋がっているからだ。
トロント証券取引所に上場しているターコイズ・ヒル社の株価は4月9日、モンゴル時間で10日の逮捕をうけて3.1ドルから2.9ドルに下がった。これは投資家たちがモンゴルで何が起きているかを慎重に見ていることの表れだ。
B.ブルガン氏刑事事件で起訴
4月19日S.ゾリグ氏(モンゴル民主化運動のリーダー、政治家)の妻B.ブルガン氏が刑事事件で起訴されたと検察庁が公表した。今回はS.ゾリグ氏の暗殺事件に関する新しい証拠書類が見つかったという理由で被告人として逮捕された。彼女の弁護士はB.ブルガン氏が秘密保持の宣誓書に署名させられたと言ったが、検察庁はこれを否定している。以前もB.ブルガン氏は拘留され捜査を受けていた。今回、検察庁は被告人として逮捕しても拘留せずに取り調べをすることになっている。
S.ゾリグ氏殺害に関わった3人の被告人は依頼を受けて殺害したと言っているが、誰から依頼されたかは未だに述べていない。一つの事件を20年以上も捜査して明らかにできないというのは、裁判にどんな人たちが関わっているのか分からない。U.フレルスフ内閣はこのように真相が明らかにされない多くの事件を諜報庁から警察庁或いは検察庁に捜査権を移すと言っていた。移すプロセスが始まって5ヵ月後にS.ゾリグ氏の妻B.ブルガン氏に秘密を漏洩しないよう宣誓書に署名させ、その翌日に被告人として起訴している。この事件に関して74ページに及ぶ書類が機密文書とされており、公開されていない。妻を被告人として起訴したということが、事件に関する全ての文書が国民に公開されないという疑いをもたらしている。
この事件はエルデネト鉱業に関する多くの問題を覆い隠している。事件の捜査は再び長引き明らかにされないと思う。この事件は内閣、Ts.ニャムドルジ法務大臣の権力や能力を超えているようだ。とにかく、今分かっていることはS.ゾルグ氏は暗殺された。彼の妻は事件当夜トイレで縛られていたということ。その他のことに関してはどれが本当か、どれが嘘かを未だに私たちは掴めていない。この事件の真相を明らかにするように歴代の内閣に求めてきたが、どれも明らかにできていない。これがモンゴルの民主主義を阻む巨石となって私たちは前進できない。他の重大な事件が起きる度に国民の注意を逸らすため、意図的にこの事件を取り上げているのではないかともみえる。この事件が他に取り上げられている問題と何らかの形で関連しているのか、それとも私たち全体を監視している影の権力が存在するのか、重要な時に裏で働きかける指導者がいるのかという疑惑もある。
モンゴルテレビ報道機関フォーラム
視聴者の利益、知的財産権をテーマに5回目となるモンゴルテレビ報道機関フォーラムが開催された。私はこのフォーラムの前半に参加した。国民の80〜90%がテレビからマスメディアの情報を受け取っている。マスメディアは第四の権力とも言われる。しかし最初の3つの権力を堕落させたのはマスメディアかもしれない。だからその3つの権力を堕落から脱却させるのもまたマスメディアであるべきだろう。
モンゴル人は1日平均3.6時間、休日は5時間テレビをみて過ごしている。これは私たちの自由時間というものが、どのくらい自由でなくなったかを計る一つの指標だ。4〜17歳の子どもたちは平日2時36分間、休日3時間テレビを観ていて、これはほぼ大人と同様である。子どもたちは主にアニメーションを観ている。しかし、アニメーションの96%は外国のコンテンツなのだ。まるで私たちは家にいながらモンゴル人ではなく、アメリカ人を育てているようだ。どうしてだろうか。
テレビ番組の構成では通常のテレビ放送とケーブルテレビの違いが無くなっていると言われている。全てのチャンネルで映画、音楽が流れている。そこでスポーツ番組や子ども番組で多様化し、チャンネルは放送目標を達成している。しかし、娯楽番組は需要を超えていると指摘された。映画、特に海外ドラマがテレビコンテンツの大半を占めている。しかし、モンゴルのドラマが占める割合は低い。映画に関してモンゴル映画は49%、アメリカ映画は32%を占めている。歴史や文化などのドキュメンタリー番組は需要が高い割に供給が少ないコンテンツだと言われている。
モンゴルには約470の報道機関がある。その70%を元政治家や現職政治家が所有している。報道機関が政治化された結果、放送業界で働く人の給与は非常に低いようだ。放送業界には2500人が務めていて、その内のほとんどが24〜39歳の若者であり、平均月給は60万から100万トゥグルグである。だからこの分野は利益がないままだ。ウランバートル市民は1日の20%をテレビの前で過ごしている。マスメディア市場は約470億トゥグルグであり、そのうちの60%をテレビが占め、総額290億トゥグルグを100社のテレビ局で分けている。これでは十分な給与を確保する事は出来ないのだ。政府高官全員が報道機関を所有できるようになっており、その所有しているテレビ局を通して自分たちの政党や政治活動を声高に褒める手段にしている。この分野で働く人たちの専門能力向上のために何も貢献していない。このような行為を止めるために、直接的間接的を問わず誰が報道機関を所有しているかを公表する必要がある。さもなければ報道機関は公共のためではなく政治家の手足となり、政府は国民の為でなく自分たちを養っている数社のために働くことを止めないだろう。
飲料水の供給
4月20日、国連特別報告者であるレオ・ヘラー氏が、モンゴルの水の安全と衛生環境について調査した結果を公表した。この調査結果によると34の村で水質は基準を満たさず、地方の56%は衛生設備が整っていない。国連は水と衛生設備の利用は人権の一つとみていて、ゲル地区の飲料水の衛生状態は改善を要するとアドバイスをしているのだ。また企業は汚水処理にかかる費用を負担すべきだが、現状は何もしていない事を市民社会機関が報告した。
報道機関は自分たちにとって利益のある事のみを報道し、利益が無い場合には沈黙しているので、今回「水問題が深刻化している」と外国人から指摘されたのだ。
ウランバートルの人口のほとんどは下水設備の整っていないゲル地区に集中している。集合住宅の住民は一日200リットルの水を使用しているが、ゲル地区の住民は一日に10リットルしか使用していない。理由は水を容器などに入れて運んでこなくてはいけない事と、300世帯に一つしか井戸が与えられていないからだ。政府はこの報告をどう受け止めているのだろうか。ゲル地区を減らすための住宅への移住がなぜ進まないのか。なぜ、4万戸の住宅が空いているにもかかわらず、20万世帯が地面に穴を掘ってトイレを作る生活を強いられているのかという事をこの特別報告者が訴えている。上下水道の問題を解決せずに今後の発展はない。これから春から夏になり、街に異臭が漂うようになるだろう。空港ではその匂いが観光客を歓迎するようになる。
日本語版制作:Mongol Izumi Garden LLC http//translate.mig.asia
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